日本人は、他の国と比較しても「清潔」「安全」に対しての意識が高いと言われています。近年ではますます清潔・安全の意識が高まり、さまざまな分野において「抗菌加工製品」が製造、販売されるようになっています。そのため、普段何気なく生活している中にも抗菌加工製品が入り込んでいて、身近な存在となっています。

しかし、抗菌加工品とは、具体的にどのような効果があるのか、きちんと説明できる方は少ないと思います。正しい知識を持って購入したり利用しないと、実は効果がなかったり、間違った使い方をしているかもしれません。

そこで今回の記事では、安全な生活のために役立つ抗菌加工製品について、その効果や仕組み、具体的な種類について詳しくお伝えします。また、メリットだけではなく注意点もお伝えしますので利用する際に役立ててください。

抗菌加工製品とは?

「抗菌」について

抗菌加工品についてご説明する前に、まずは「抗菌」という言葉をきちんと理解しておく必要があるでしょう。SIAA(抗菌製品技術協議会)は抗菌の定義を以下のようにしています。

菌を長時間増やさないようにすること

これは、「殺菌」や「滅菌」、「消毒」、「除菌」とは明確に区別されます。

特に、抗菌加工においては、次のように具体的な定義をしています。

製品の表面上における細菌の増殖を抑制する

つまり、「抗菌」という意味には、菌を殺したり除去したりするという意味はなく、また、抗菌加工されているからと言って、菌が全く付かないわけではありません。細菌の増殖を抑えるための加工であることを理解して、上手に活用することが大切になってきます。

「抗菌加工製品」の基準

上記の説明を踏まえればもうお分かりですね。抗菌加工製品とは、細菌が増殖しないよう表面に加工が施されている製品のことです。

しかし、細菌の増殖を抑制するというだけでは、どの程度の効果があるのか判断することができません。そこでJIS(日本工業規格)では、抗菌効果の基準を次のように規定しました。

”加工が施されていない表面と比較して、細菌が増殖する割合が100分の1以下であれば抗菌効果がある”

またこの他に抗菌加工製品の効果、持続性、安全性を確認するための試験もあります。しかし、メーカーや団体ごとに試験方法や試験項目、評価基準の設定が違いますので、製品ごとに多少の差があることも理解しておきましょう。

抗菌加工製品の仕組み

では、抗菌加工製品はどのようにして細菌の増殖を抑えているのか確認していきましょう。

まず細菌は金属を嫌う性質があります。この性質を利用して、抗菌加工品では抗菌剤や金属を素材に練り込む・結合させるなどにより抗菌効果を得ています。または、抗菌作用のあるコーティング剤を表面に塗布している場合もあります。

こうした抗菌加工品では、銅やナノ銀、銀イオンや酸化チタンなどの金属がよく利用されています。

抗菌加工製品の種類

次に、抗菌加工製品の種類ですが非常に多岐に渡ります。身近なもので挙げれば、食品を扱うキッチン周りの製品は抗菌加工されているものがほとんどです。包丁やまな板、ラップなど、直接食品に触れるものだったり、食器を洗うスポンジや水切り袋、三角コーナーといったものも抗菌加工製品です。

また、家電も抗菌加工製品であることが多いです。エアコンのフィルターや空気清浄機などお部屋の空気に関するものや、冷蔵庫、炊飯器、食洗器などのキッチン家電のほか、いつも手に触れている携帯電話(スマートフォン)も抗菌加工されています。

意外なものでは、ペット用品、子どもが遊ぶ砂場用の砂、他にもキャッシュカードや棺など、「こんなものまで!?」と思うようなものにも抗菌加工されているものがあります。

抗菌加工製品一覧

以下には、「抗菌加工製品ガイドライン」に記載されている製品の一覧を表にしたものです。あくまで一例ではありますが、以下のようにさまざまなものに抗菌加工がされているということがわかります。

分野 製品
繊維 靴下、肌着、下着、タオル、ふきん、傷当て材、白衣、寝具、カーテン、カーペット など
家電 洗濯機、掃除機、冷蔵庫、食器洗浄乾燥機、電気ジャーポット、空気清浄機、炊飯器、電話機、シェーバー、カセットテープ など
建材 床材、クロス(壁紙)、タオル、アルミ建材、塗装材 など
住宅設備機器 電気洗浄便座、浄水器 など
キッチン用品 スポンジ、包丁、まな板、水切り袋、フィルム包材、流し三角コーナー、野菜洗い用ぶらし、ゴミかご、弁当箱 など
バス・トイレ用品 湯上りバスマット、トイレケース付きブラシ、トイレ用コーナーポット、ボトル(シャンプー等) など
生活用品 歯ブラシ、カミソリ、ヘアカーラー、靴(中敷)、油取り紙、マスク、抗菌スプレー、アクセサリー(18金合金) など
文具 ボールペン、シャープペン、鉛筆、消しゴム、フロッピーディスク など
玩具 ぬいぐるみ など
自動車 ステアリング、シフトノブ、空気清浄機、内装 など
その他 砂場用抗菌砂、キャッシュカード、棺 など

(引用:抗菌加工製品ガイドライン

抗菌加工製品を選ぶメリット

世の中には多くの細菌が存在していますし、空気中やわたしたちの体の中、皮膚の表面にも細菌がいます。この中には、人体に悪影響を及ぼす細菌(=病原菌)もいれば、人体に無害なものや良い影響を及ぼしてくれる細菌(=常在菌)も存在します。

わたしたちが病気になったり体調を崩したりするのは、これらのバランスが崩れたとき、あるいは一定量を超えて増殖し異常に数が増えてしまったときがほとんどです。

逆に、細菌がまったくいない、無菌状態となっても人体によくありません。過剰に殺菌・消毒を行うことで常在菌まで殺してしまい、免疫力を下げてしまう可能性もあります。したがって、人間はある程度、細菌や微生物たちと共存していく必要があると言えます。

抗菌加工製品のメリットはここにあります。製品の表面では異常に細菌が増殖してしまうのを防ぎますが、一切の細菌がいなくなるわけではありません。細菌と共存しながらも、安全、清潔に過ごすことができるというわけです。

抗菌加工製品の注意点

コロナウイルスの猛威によって、清潔、安全への意識はいっそう高まりました。そのため、意識的に抗菌加工製品を利用する機会も増えていますが、その際は次の2つに注意しましょう。

SIAAマーク・SEKマークをチェックする

1つめは、「抗菌加工製品の基準」でもお伝えしましたが、販売しているメーカーや団体によって、同じ「抗菌」という言葉が使われていても抗菌効果や持続性、安全性の基準に多少のばらつきがあります。これは、試験方法や項目、評価基準が違うためです。

そこで、こうした不安や疑問を解消するために、SIAAマーク(繊維製品にはSEKマーク)があります。このマークは、SIAA(抗菌製品技術協議会)のシンボルマークで、協議会が設定した基準をクリアした製品のみがつけられるマークです。このマークが付いている製品は品質、安全性がきちんと開示されており安心です。

抗菌効果を過信しすぎない

2つめは、「抗菌加工されているからと言って、菌が増えないわけではない」ということです。抗菌加工されていたとしても、著しく汚れていれば細菌がそこで増殖します。そうなると、病気など人体に影響が出てしまう可能性は十分にあります。抗菌加工製品だからといって過信し過ぎずに、きちんと清潔に保つようにしなければなりません。

自分で抗菌加工する方法もある?!

わたしたちの身の回りには、さまざまな抗菌加工製品で溢れており、多くのメリットがあることがわかりました。しかし、抗菌加工品も永遠に効果が持続するわけではありません。使っているうちに少しずつ抗菌効果は薄れてしまいます。また、もちろん抗菌加工製品でない製品も多く存在しています。

こうしたものには、自分で抗菌加工をして効果を得ることが可能です。

例えば、抗菌作用のあるコーティング剤は市販の商品も多く、スプレーしたり塗り込んだりして、抗菌加工することができます。ほかにも、コーティングの専門業者に依頼することもできますが、自分で抗菌加工すれば費用を抑えられますし、意外と簡単にできるためおすすめです。

まとめ

コロナウイルスの猛威もあり、今まで以上に「安全」や「清潔」に対しての意識が高まっています。細菌は増えすぎると病気や不調を引き起こしてしまう原因になりますので、高齢の方や小さなお子さんのいるご家庭では特に気を付けているでしょう。

抗菌加工製品は、細菌の増殖を防ぐことができます。必要以上に殺菌してしまうのも逆効果になりますが、抗菌加工製品であれば常在菌と共存しながら清潔を保つことができるメリットがあります。

ただし、抗菌効果は永遠に続くものではありません。また、すべてのものが抗菌加工されているわけではありません。そういったものには、市販されている抗菌作用のあるコーティング剤を使って、自分で抗菌加工することもできます。

市販されているものは手順も少なく簡単にできるので、日頃の清掃やメンテナンスのついでにやってみるのも良いかもしれません。インターネットの通販サイトなどですぐに手に入りますので、安全に生活を送るために、ぜひ、身の回りの物の抗菌加工に挑戦してみてはいかがでしょうか。