今、世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスの影響もあり、これまで以上に抗菌グッズが注目を集めています。ただ、本当に効果があるのか疑問に感じている方も多くいます。

また、改めて様々な抗菌グッズや商品を見てみると、「抗菌」以外にも「除菌」や「滅菌」といった記載があります。これに対しても、どんな違いがあるのか疑問に感じていないでしょうか。

そこで、この記事では抗菌グッズの効果について詳しく解説します。ご自身や家族の身を守るためにも、安心して生活できるように正しい抗菌グッズの知識を身につけていきましょう。

抗菌グッズの効果とは?

やはり、まず気になるのは抗菌グッズは本当に効果があるのかということだと思います。

冒頭では「抗菌」「除菌」「滅菌」といった似た言葉を挙げました。明確な違いについては次の項目でお伝えしますが、これらに共通するのは、細菌の数を減らす、または増殖を防ぐということです。

つまり、細菌が増えることによって生じる以下のような悪影響を防ぐことが抗菌グッズの効果と言えます。

食中毒や肺炎、胃潰瘍などさまざまな病気の原因になる

わたしたちの体の中や表面、また空気中には、目には見えない多くの微生物が存在しています。これらの一部が細菌であり、人体に悪影響を及ぼすもの(=病原菌)と、及ぼさないもの(非病原菌)が混在しています。

すべてが病原菌ではないとはいえ、細菌が増殖すると病原菌の数も増えることになるため、食中毒や肺炎、胃潰瘍、結核など、細菌性の病気にかかるリスクが高くなります。

水回りなどのヌメリやアカ汚れの原因になる

キッチンやお風呂など、水回りに多く見られるヌメリやアカ汚れも細菌の増殖によるものです。それぞれ、水回りの汚れを栄養として水道の水や空気中の細菌が繁殖して起こります。ヌメリはバイオフィルムとも呼ばれ、集まった細菌とその分泌物によって発生します。

嫌な臭いの原因になる

生乾きの洗濯物や汗など、嫌な臭いも細菌の増殖が原因しています。生乾きの臭いの原因は、常在菌であるモラクセラ菌だと言われています。この菌はそれ自体が人間に悪影響を及ぼすことはありませんが、増殖するときに出る、いわば排泄物のようなものが溜まると悪臭が発生します。

また、汗もそれ自体では臭いはほとんどありませんが、汗や皮脂汚れをエサとして細菌が増殖することで嫌な臭いの原因となります。

「抗菌」と「除菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」の違いとは?

「抗菌」と「除菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」それぞれの違いを理解するポイントは以下の2つです。

  • 菌を殺すか殺さないか
  • 対象の商品・グッズが医薬品・医薬部外品かそれ以外か

前項でも触れたように、これらの言葉に共通するのは、細菌の数を減らす、または増殖を防ぐということです。細菌の数を減らす方法が、「菌を殺す」ことなのか、「菌を取り除く、または増えさせない」ことなのかが1つめのポイントです。

また、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により、「殺菌」「滅菌」「消毒」という言葉は医薬品・医薬部外品にしか使うことができません。わたしたちが日常で使っている雑貨などは、「抗菌」や「除菌」の商品だということですね。

このような紛らわしい言葉がありますが、商品選びに役立つ情報になりますので、それぞれ詳しく確認しておきましょう。

抗菌

本来、学術用語としての「抗菌」とは、殺菌や滅菌、消毒などのほか、細菌の増殖抑制も含めた大きな概念とされていました。専門誌などではより細かく区別して定義していましたが、それぞれの専門誌で異なっているなど、明確ではありませんでした。それが、1998年、現在の経済産業省が「抗菌加工製品ガイドライン」として、

抗菌加工した当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること

と定義し、細菌の増殖を抑制することが抗菌の意味として広く認識されています。

ただし、抗菌効果や安全性、持続性を確認するテストにおいて、評価基準や試験方法、試験項目は、各メーカーや各団体によって多少の違いがあります。そのため、信頼できる効果を示している商品を選ぶことも重要になります。

除菌

対象とする物から菌を取り除くのが「除菌」です。「殺菌」との違いは対象物が医薬品・医薬部外品であるかどうかということです。医薬品・医薬部外品以外は「殺菌」という言葉が使えないため、殺菌効果があったとしても「除菌」が使われます。

ただ、「抗菌」と同じく基準が明確ではなく、除菌効果のないものと比べて、使用したときに細菌の数をある程度減らすことができれば、「除菌」と表示されています。やはり、商品を選ぶときにはどの程度の除菌効果があるのか、また、その効果は信頼できるデータなのかを判断することが大切になります。

殺菌

殺菌とは読んで字のごとく、細菌を殺すことです。医薬品・医薬部外品のみに使用できる言葉で、洗剤などの雑貨には使うことができません。医薬品・医薬部外品以外のグッズなどに殺菌という言葉が使用されていたら注意しましょう。

また、殺菌はすべての菌を殺すというわけではなく、数や種類に関わらず、細菌を殺せば「殺菌」となります。

滅菌

滅菌は、対象とする物からすべての細菌・微生物を殺菌または除菌することです。言葉の定義では、この「滅菌」が一番強力なものとなり、医薬品・医薬部外品にしか使うことができません。

注意点としては、「滅菌○○」といった表現をする場合、それ自体が滅菌されている物だというだけで、他の物を滅菌する効果はありません。例えば「滅菌ガーゼ」とは、滅菌処理がされているガーゼということです。

消毒

消毒とは、人や動物などに対して有害な病原菌を対象として、殺菌したり除去または無害化したりすることを言います。すべての細菌、微生物を殺す・除去するというわけではなく、非病原菌など残る細菌もあります。

本当に効くの?抗菌グッズが菌を防ぐ原理とは?

抗菌グッズの多くは、抗菌剤や抗菌作用のある金属を素材に練り込んだり、結合させたり、表面に塗ったりして製造されています。

抗菌剤とは、細菌の生命機能を破壊、あるいは乱すもので、お茶に含まれるカテキンなどがよく知られています。また、細菌は金属を嫌う性質があり、銅や銀、チタンなどが抗菌グッズに利用されています。

こういった物質や金属を用いることにより、抗菌グッズなどの製品の表面において、細菌の増殖が抑制されるという原理です。

抗菌グッズの表示マークってなに?

前項でもご説明したように、「抗菌」と表示されていても、各メーカー、団体によって細かい評価基準や試験方法などが異なりますので、抗菌効果についてはバラつきがあると言えます。そのため、消費者センターがテストしてみると抗菌効果が得られなかったものもあったと言われています。

そこで、業界団体が基準を設定し、自主的に調査して抗菌効果が認められた製品に対してマークをつけて品質を保証することを行っています。

表示マークは繊維製品と繊維以外の製品で分けられており、プラスチック製品につけられるマークもあります。それぞれのマークについては、以下でさらに詳しく解説します。

SEKマーク

SEKマークとは、一般社団法人繊維評価技術協議会という団体が実施する認証制度で、業界自主基準に合格した繊維製品のみが表示できるマークです。

  • 抗菌防臭加工(青)
  • 制菌加工(医療機関の繊維製品:赤、一般家庭・食品業務用の繊維製品:橙)
  • 光触媒抗菌加工(紫)

このようにマークの色で区別されています。ほかにも、抗かび加工、抗ウイルス加工、消臭加工、防汚加工といったものがあります。

SIAAマーク

SIAAマークとは、SIAA(抗菌製品技術協議会)という業界団体のシンボルマークです。この協議会が設定した抗菌、防カビ、抗ウイルス加工品の品質や安全性に関してのガイドラインを満たした製品で、かつSIAA会員でなければこのマークを付けることができません。

また、SIAAマークは繊維製品以外のものに付けられ、繊維製品には前述のSEKマークが付けられます。

抗菌グッズの種類

抗菌グッズは非常に身近なものとなっており、普段の生活のさまざまなシーンで目にしています。

抗菌シート

ウェットティッシュのようにサッと拭いて綺麗にするようなものは「除菌シート」です。抗菌シートは、シート自体に菌の増殖を防ぐもので、例えばお弁当などの上に敷いて菌の増殖を防ぎます。

抗菌スプレー

ドアノブや赤ちゃん用品など、気になる部分にスプレーして拭き取ると、ウイルスや菌を寄せ付けない効果が期待できるスプレータイプの抗菌グッズもあります。

ハンドソープ・ハンドジェル・ボディーソープ

ハンドソープやハンドジェル、ボディーソープは医薬部外品に当たるため、「抗菌」よりも「薬用」や「殺菌」「消毒」といった言葉がつけられています。

抗菌加工製品

抗菌加工品とは、抗菌剤や抗菌作用のある金属を素材に練り込む、結合させる、あるいは表面に塗るなどの加工をされた製品のことを言います。

抗菌コーティング

抗菌コーティングとは、抗菌加工されていない製品の表面を抗菌成分の含まれたコーティング剤で保護することを言います。床や壁、便器や浴室など、さまざまな場所や物に対応できるのが特徴です。

抗菌グッズの効果の持続時間はどれくらい?

抗菌グッズの持続時間は、それぞれの製品によって違いがあります。例えば、ある抗菌スプレーであれば1時間など、持続時間が短くなります。

一方で抗菌コーティングはドアや手摺などは2~3年、壁などは5年と比較的長期間となります。

抗菌グッズの使いすぎは逆効果?!

抗菌グッズは手軽に利用できるのがメリットですが、あまり使いすぎると逆効果だという見解もあります。

問題視されているのは、「トリクロサン」と「トリクロカルバン」という抗菌成分です。実際に、日本の厚生労働省のような機関であるアメリカのFDAでは、「製品が謳っているような安全性や抗菌の有効性が確認できない」という理由で、「トリクロサン」、「トリクロカルバン」をはじめ、計19種類の抗菌成分が含まれているハンドソープ・ボディーソープなどを販売禁止にしました。

また、先にも述べたように、人間の体には多くの常在菌がおり、良い働きをしてくれる細菌もいます。抗菌グッズを使いすぎることでこれらの良い菌も減らしてしまうこともあります。

このように、何でもかんでも抗菌グッズを使うのは良くありません。例えば、必要な身の回りのものを選別して抗菌コーティングしておくことで、抗菌グッズを使いすぎないようにすることも大切です。

抗菌コーティングの効果とは?

抗菌コーティングの効果は、細菌の発生や増殖を防ぐだけではありません。抗菌コーティングをすることによって、かびの予防、汚れ防止にもつながり、また、コーティングした物や場所の劣化を防ぐといった効果も期待できます。

つまり、汚れてから処理するのではく、未然に汚れを防ぐという予防効果もあるため、みだりに除菌シートやスプレーなどを使うこともなくなります。

まとめ

「抗菌」、「除菌」、「滅菌」などの違いはお分かりいただけたでしょうか?これらの違いを理解するポイントは、「細菌を殺す」か、「取り除く」あるいは「増殖を防ぐ」ということでしたね。

私たちが手軽に利用できる抗菌グッズですが、どの商品でも効果が同じわけではありませんし、効果の持続時間も異なります。加えて、ハンドソープなど身体に使う抗菌グッズは、使いすぎると常在菌まで殺したり、数を減らしたりというデメリットもあります。

抗菌加工製品や抗菌コーティングは、抗菌グッズなどと比較すると効果の持続時間も非常に長く、使い過ぎによるリスク、デメリットもありません。

また、抗菌コーティングは抗菌効果だけでなく、防カビ、防汚のほか、その部分の劣化を防ぐ効果もあります。さまざまな箇所、物に施すことができますので、除菌シートやスプレーなどと上手に併用してみてはいかがでしょうか。